「日本語の作文技術」を読んで

ことばづくり

本多勝一氏著の「日本語の作文技術」を読んだのでまとめました。

とても良くまとめられていて文章を書く時や推敲するときのポイントとして抑えておくと読みやすい文章になる内容がまとめられていました。とくに直し方が明確なので悩む必要がないですね。絶対とはいいませんが文章を直しては「どうかなぁ」と悩まなくなるのは文章を書く側としては嬉しいですね。

ちなみに短文至上主義を掲げていた私ですがこの本を読んで「長文でもここを工夫すれば読みやすくなるよ!」ということを学びました。たしかに、長い文章でも解る文章ありますよね。あれの法則みたいなものが載っています。分かる例とわかりにくい例。

この本は以下の8つの章でできており、それぞれ文、句や節、文章について取り上げている。

1.修飾する側とされる側(文の構成)
2.修飾の順序、節の順序(文の構成)
3.句読点の打ち方(文)
4.漢字とカナ(単語)
5.助詞の使い方(区や節)
6.段落(文章)
7.無神経な文章(文章)
8.リズムと文体(文章)

とくに修飾の順番についての部分は学ぶところが多かった。文章を書くときはぜひ気をつけて行きたいと思う。この本の日本語文法の基本は三上文法を基本としているところが多い。三上文法をざっくり説明すると「日本語には主語はなく述語と修飾語で構成される」といったものである。また、「は」には様々な意味が含まれており、文章における「主体」を表すときに使う。といった感じである。詳しく知りたい方は原著を当たって欲しい。ちなみに有名な著作は「象は鼻が長い」です。また、ゆる言語学ラジオで水野さんが解説しているので手っ取り早く知りたい方はそちらを参考にしてください。

この本の後半は「お前の趣味だろ」と言いたくなってしまう。ただ、言わんとすることはわかるし納得感もあるので本記事では軽く紹介しておく。

修飾の順序

この本の肝です。ざっくり3章の修飾の順序をまとめると下記の通り。

①節を先に、句をあとに。(節=主語+述語の構成、句=節でない2語以上のまとまり)
②長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。
③大状況・重要内容ほど先に。
④(単語同士の)親和度の強弱を考慮した配置転換

このルールを踏まえて適当なネット記事を推敲してみました。

ソースはこちらhttps://news.yahoo.co.jp/articles/0a3bb7f94535d1164300a25fcd81bd800b236d61

”世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス緊急委員会は19日、感染力が極めて強くワクチンによる免疫を回避するオミクロン株が世界中で大流行する中「国際的な渡航禁止措置に付加的な効果はなく、加盟国の経済的・社会的ストレスの原因となり続けている」と解除または緩和を勧告した。”

これは流石に長過ぎるのでは?と思ってしまいますね。長いので区切っていきます。

世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス緊急委員会は/
19日、/
感染力が極めて強くワクチンによる免疫を回避するオミクロン株が世界中で大流行する中/
「国際的な渡航禁止措置に付加的な効果はなく、加盟国の経済的・社会的ストレスの原因となり続けている」と/
解除または緩和を/
勧告した。

いや、やっぱり長すぎるんよ。「感染力~」の文いらんやろ。コメントの中身を把握すれば「(国際的な渡航禁止措置の)解除または緩和」ということが読みとれるけど、ちょっと不親切だよね。誰に対しての勧告かも明記されていないですね。以上のことを踏まえて下記のように直してみました。

1月19日、「国際的な渡航禁止措置に付加的な効果はなく、加盟国の経済的・社会的ストレスの原因となり続けている」と世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス緊急委員会は国際的な渡航禁止措置の解除または緩和を各国に勧告した。

いやぁ、でも十分長いな。でも、いかがだろう。少しばかり読みやすくなったのではなかろうか。

次の文章

”現時点で日本に帰国・入国する人は出国前72時間以内に受けた検査結果の証明が必要で、入国後10~14日間は宿泊施設や自宅で待機、公共交通機関も使用できない。”

区切ると下記の通り

現時点で/
日本に帰国・入国する人は/
出国前72時間以内に受けた検査結果の証明が必要で、入国後10~14日間は/
宿泊施設や自宅で/
公共交通機関も使用できない/
待機(をしなければならない)

述語は一番うしろにいるものだと思ったが、読んでみたら殆どの修飾語は「使用できない」にはかかっていない。もっというと文中にはおそらくいなくて、「待機しなければならない」が述語だと思われる。あと「出国前~」の文が長いうえに「は」が2つあって気持ち悪い。「検査結果の証明が必要」とあるが、正確には「陰性の検査証明証が必要」だろう。ここは内容のはなしなので作文技術のルールとは関係ないが記者なら調べて陰性の証明といってほしいものである。さらに「公共交通機関も使用できない」をこの文にねじ込むのは難しい。なぜなら述語が違うから。

出国前72時間以内に受けた陰性の検査証明証を検疫所に提出したうえで宿泊施設や自宅で10~14日間の待機を日本に帰国・入国する人はしなければならない。
なお、宿泊施設や自宅への移動には公共交通機関が使用できない。

とまぁ、こんな感じだろうか。手前味噌で大変恐縮だが読みやすくなっていると思う。ぜひ長い文をかいてしまったときに添削してみてほしい。重要なことを前に持ってきつつ長い修飾語を前に、短い修飾語を後ろに持っていくことで読みやすくなります。

句読点の打ち方

読点「。」は打て。絶対に打て。読点を打たなかった人に親でも殺されたのかと思うぐらい力強く読点を打てと主張している。悪いことは言わない。読点は打っておけ。

句点「、」は打たなくても修飾の順序があっていればおおよそ意味が伝わる。どうしても順番を入れ替えて句点で区切らないと意味が伝わりにくい時などに用いるべし。口語のように間としての句点は文章になっているとかえって読みにくくなるので避けるべし。とのこと。

助詞の使い方

日本語というのは英語と違い助詞によって述語と修飾語の関係が表される。そのため、短い修飾語は助詞さえあっていれば順番を考えなくてよいと主張している。

例文:AがBにCを紹介したこと
(1) AはBにCを紹介した
(2) AはCをBに紹介した
(3) BにAがCを紹介した
(4) BにCをAが紹介した
(5) CをAがBに紹介した
(6) CをBにAが紹介した

いずれも意味が通る。一方で修飾語が長くなるとわかりにくい組み合わせが出てくる。それは修飾の順番で説いた「長い修飾語を前に、短い修飾語を後ろに」を踏襲しないパターンだ。例としてBを「私が震えるほど大嫌いなB」、Cを「私の親友C」と置き換えてみよう。

(1) Aは私が震えるほど大嫌いなBに私の親友Cを紹介した
(2) Aは私の親友Cを私が震えるほど大嫌いなBに紹介した
(3) 私が震えるほど大嫌いなBにAが私の親友Cを紹介した
(4) 私が震えるほど大嫌いなBに私の親友CをAが紹介した
(5) 私の親友CをAが私が震えるほど大嫌いなBに紹介した
(6) 私の親友Cを私が震えるほど大嫌いなBにAが紹介した

修飾の順序のルールに従うと(4)が最適解とされる。そこまで長くない文章なのでどの組み合わせでも理解できる。ただ、(5)については「~Aが私が~」となっているところなどわかりにくくなっている。このように正しい助詞を使うことは正しく意味を伝えるための必要条件である。そのうえで修飾の順序を工夫することが大切である。

助詞さえ正しければ順番は関係なく意味が通じる。これは助詞を間違えたらガラリと意味が変わってしまうということだ。なので助詞は正しく使おう。特に気をつけたほうがよい助詞は下記の通り。

・まで、までに
・の⇔が
・は(副助詞)

「は」については冒頭でも紹介した「像は鼻が長い」を読むと本質が見えるような気がするのでおすすめです。

段落

無神経な文章

以下の文章はダサいので使うなとのことです。

1.紋切形(使い古された表現)
2.繰り返し(同じ表現や文末、接続詞の繰り返し)
3.自分で笑う文章(「ムムッ」や「ジロー」、「ZZZ」などの軽薄なオノマトペ)
4.体言止め
5.ルポルタージュの過去形(取材を過去形で書くと臨場感が出ない)
6.サボり敬語(デスマスつければいいってもんじゃない。)

といった感じでした。厳しいご指摘。

文章のリズム

文豪の書いた名文を連ねてリズムを説いている。もはやセンスやん。リズムとかセンスやん。

おわりに

冒頭にも書いたけど修飾の順番は非常に学びでした。文章を書くときは注意したいと思います。

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